フランスでの留学や長期滞在を経験する上で、必ずと言っていいほど直面するのが、日本の公的書類の提出です。
特に「出生証明書(Acte de naissance)」は身分を証明する上で極めて重要であり、その有効性をフランスで認めてもらうためには、「アポスティーユ認証(Apostille)」や「法定翻訳(Traduction assermentée)」が必要となります。
「何それ?どうすればいいの?」と戸惑う方も多いはず。実は、私は何も準備せず、フランスに来てしまったので、皆さんには、ぜひスムーズに準備できるように情報をシェアしたいと思います!
ここでは、日本で行う場合と、すでにフランスにいる場合(またはフランスから行う場合)に分けて、それぞれの具体的な手順・費用・必要書類を分かりやすく解説します。
1. 「出生証明書(Acte de naissance)」とは?
フランスの行政機関が求める「Acte de naissance(アクト・ドゥ・ネサンス)」とは、日本でいう**「戸籍謄本(こせきとうほん)」または「戸籍抄本(こせきしょうほん)」**に相当します。戸籍謄本には、あなたの氏名、生年月日、両親の氏名、本籍地などが記載されており、これがフランスであなたの「出生の事実」と「身分関係」を公的に証明する唯一の書類となります。
2. 「アポスティーユ認証(Apostille)」とは?
アポスティーユ認証は、提出先の国(この場合はフランス)が、提出された日本の公的書類を「真正なもの」として認めるための国際的な認証です。書類の発行国(日本)の外務省が、その公的書類に偽りがないことを証明します。
【重要性】 フランスの行政機関(Préfecture、CAF、Sécurité Socialeなど)に戸籍謄本を提出する際、アポスティーユが付与されていることで、書類の信頼性が格段に高まります。
3. 日本で準備する場合
フランス渡航前に日本でこれらの準備を済ませておくのが、最もスムーズで費用も抑えられる方法です。
📌 ステップ1:戸籍謄本(または戸籍抄本)の取得
- 取得場所: あなたの本籍地がある市区町村役場。
- 注意: 住民票がある場所と本籍地は異なることが多いです。ご自身の本籍地を確認してください(ご両親に尋ねるのが確実です)。
- 必要なもの:
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料:1通 450円程度
- 所要時間: 窓口で即日発行
📌 ステップ2:外務省でアポスティーユ認証の取得
取得した戸籍謄本にアポスティーユ認証を付与します。
- 申請場所: 日本の外務省(東京または大阪)
- 申請方法:
- 郵送申請: 外務省のウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要書類を同封して郵送。返信用封筒も必要。
- 窓口申請: 外務省の領事サービス部(東京)または大阪分室で直接申請。
- 申請方法:
- 必要なもの:
- アポスティーユを付与したい戸籍謄本(原本)
- アポスティーユ申請書(外務省ウェブサイトよりダウンロード)
- 本人確認書類(郵送の場合はコピー、窓口の場合は原本)
- 返信用封筒(郵送の場合)
- 費用: 無料(郵送の場合は郵送費のみ)
- 所要時間:
- 郵送の場合:往復の郵送期間を含め1週間~10日程度
- 窓口申請の場合:数日後以降の交付、または即日交付(条件による)
- 外務省のウェブサイト:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/shomei/index.html
📌 ステップ3:フランス語への翻訳(渡仏後でも可能)
アポスティーユ認証付きの戸籍謄本を、フランスの「法定翻訳家(Traducteur Assermenté)」にフランス語へ翻訳してもらいます。
- 翻訳者: フランスの法定翻訳家(駐日フランス大使館などが発行したリストに載っている翻訳者でも可ですが、費用が高い傾向にあります)。
- 費用: 1通あたり50ユーロ~100ユーロ程度(翻訳者や内容による)
- 所要時間: 数日~1週間程度
4. フランスから準備する場合(すでにフランスに滞在中)
すでにフランスにいる場合、日本にいるご家族や友人の協力が必要になります。
📌 ステップ1:日本のご家族・ご友人に戸籍謄本の取得を依頼
あなたからの「委任状」を添えて、日本の代理人に戸籍謄本の取得を依頼します。
- 依頼者: 日本にいるご家族(親、兄弟など)または信頼できるご友人
- 依頼すること: あなたの戸籍謄本を取得してもらう。
- 手順:
- 委任状の作成:
- 本籍地の市区町村役場のウェブサイトから「戸籍謄本交付申請用委任状」のフォーマットをダウンロード。
- 必要事項を記入し、あなたの署名をする。
- 委任状の郵送:
- 作成した委任状と、代理人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピーなど)を、**国際郵便(EMSなど追跡可能な方法を推奨)**で日本のご家族・ご友人に送る。
- 代理人による取得:
- 委任状を受け取ったご家族・ご友人が、本籍地の役所の窓口で戸籍謄本を取得する。
- 委任状の作成:
- 必要なもの(代理人):
- あなたからの委任状(署名済み)
- 代理人自身の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料:1通 450円程度
📌 ステップ2:日本のご家族にアポスティーユ認証の取得を依頼
取得した戸籍謄本にアポスティーユ認証を付与する手続きを、引き続き日本の代理人に依頼します。
- 依頼者: 戸籍謄本を取得してくれたご家族・ご友人
- 依頼すること: 取得した戸籍謄本に「アポスティーユ認証」を付けてもらう。
- 手順:
- 外務省のウェブサイトを確認: 外務省のウェブサイトで、アポスティーユ認証の申請方法と必要書類を確認。
- 代理人による申請: 代理人の方が、取得した戸籍謄本と必要書類を添えて、外務省にアポスティーユ認証を申請。
- 費用: 無料(代理人の交通費や郵送費は発生)
📌 ステップ3:アポスティーユ認証付き戸籍謄本のフランスへの郵送
アポスティーユ認証が付与された戸籍謄本を、日本のご家族・ご友人からフランスのあなたのもとへ郵送してもらいます。
- 方法: 国際郵便(EMSなど追跡可能な方法を強く推奨)
- 費用: 郵送費用(EMSの場合、約2,000円~3,000円程度)
- 所要時間: 発送から数日~1週間程度
📌 ステップ4:フランスでのフランス語への法定翻訳(Traduction Assermentée)
フランスに届いたアポスティーユ認証付きの戸籍謄本を、フランスの法定翻訳家にフランス語に翻訳してもらいます。
- 翻訳者: フランスの法定翻訳家
- 探し方:
- 在フランス日本国大使館のウェブサイトにリストがある場合があります。
- フランスの各控訴院(Cour d’Appel)のウェブサイトで「Liste des experts judiciaires」の項目から「traducteurs」を探す。
- インターネットで「traducteur assermenté japonais français」と検索。
- 費用: 1通あたり50ユーロ~100ユーロ程度
- 所要時間: 数日~1週間程度
5. 在フランス日本国大使館/総領事館で「出生証明書」を発行してもらう場合(補足)
日本の戸籍謄本に基づき、大使館・総領事館でフランス語の「出生証明書(EXTRAIT D’ACTE DE NAISSANCE)」を発行してもらうことも可能です。
- 取得場所: 在フランス日本国大使館または最寄りの総領事館
- 必要なもの:
- 発行から6ヶ月以内の戸籍謄本(原本)
- パスポート
- 手数料(大使館ウェブサイトで確認)
- 注意点:
- この証明書が全てのフランス行政機関で有効とは限りません。特にCAFやSécurité Socialeなどでは、上記で解説した「アポスティーユ+法定翻訳」を求められることが多いです。
- あくまで緊急時の代替手段として検討し、最終的にはアポスティーユ+法定翻訳の準備を進めることをお勧めします。
まとめ
「出生証明書」の準備は、フランスでの滞在許可証の更新、社会保険(Sécurité Sociale)への加入、住宅補助(CAF)の申請など、多くの重要な手続きで必要となります。
- 最も確実な方法: 日本で「戸籍謄本を取得」→「外務省でアポスティーユ認証を取得」→フランス到着後に「フランスの法定翻訳家に翻訳依頼」。
- フランスから準備する場合: 日本のご家族の協力が不可欠です。郵送の時間を考慮し、余裕を持って早めに依頼しましょう。
手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ着実に進めていけば大丈夫です!